第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
アリシアは思わず、縛られたままの両足で、男に蹴りを入れた。
それは見事膝に直撃し、男はよろけて尻もちをつく。
「いってぇ、舐めてやがるなこの女」
ゆっくりと立ち上がった男は、いらついた顔をして肩を回す。
その時、少し遠くで別のもっと年老いた男の声がした。
「おい、お前何をしている」
「ああ?いやなぁ、この綺麗なお嬢さんが退屈そうだったんでちょっと相手をしてもらおうかと思って……」
「阿呆が。お前みたいな酒臭くて汚い男が傷ものにでもしてみろ。いくら高貴で容姿端麗な女でも一気に価値が下がるだろう」
「かったいねぇ。良いじゃねぇか、ちょっと味見するぐらいバレやしねぇって」
「黙れ、さっさと飯でも作らんか。ったく、仕事は遅いくせに女に手を出すのだけは早いな」
男は後から来た年老いた男には逆らえないらしく、大きく舌打ちをした後去っていった。
アリシアは先ほど男に触られた辺りをひと睨みし、大きく息を吐いた。
「ここはどこかの商船の甲板の上。貴女は私の企みによって誘拐されました。そして私も協力者に裏切られてこのザマです」
静かにしていたディアナが、唐突に言った。
「え」
「貴女が知りたがっていた現状です」