第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
先ほどは泣きそうになっていたようだが、気持ちが落ち着いたらしい。
というか、あまりに淡々としていて、聞き流してしまいそうになったのだが……。
「ええと……『私の企みによって誘拐された』と言いました?」
「言いました」
「……」
「……」
沈黙。
アリシアは一度咳払いをする。
「……順番に聞いていきますね。ここはどこかの商船、というのは?」
「他国とを行き来する大量の貿易船のうちの一つですわ。ですけど、その中に時々いるのですよ。運び屋のようなことをして荒稼ぎするのが」
「ではこの船がそうだと。……これはどこに向かっているんです?」
「わかりません」
ディアナがふるふると頭を振る。
アリシアは「そうですか……」と残念がりつつ、またすぐに口を開く。
「それで、ディアナ王女はわたしを誘拐させようとしたんですね?」
「はい」
「どうしてそんなことを……」
「動機については何となく察しはついているんじゃありませんの?」
「……」
アリシアが黙り込んだことを肯定であると捉えたようで、ディアナはぽつりぽつりと話し出した。