第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
アリシアは思わずその言葉を繰り返す。
彼女の言葉が何を意味しているのか、アリシアには心当たりがあった。
「あの、それはもしかして──」
確認しようとして、すぐ思い直し口を閉ざす。
違っていたら……。
『アリシア殿、頼みがある。このことはどうか本人にも……』
真剣な眼差しをしたカイの姿が脳裏によみがえった。
「──やっぱり何でもない、です」
アリシアが呟くように言えば、その後また沈黙が訪れる……はずだった。
しかし沈黙の代わりに、コツコツと軽い足音が近づいてくるのが耳に届いた。
また誰か来たのか、と顔を上げようとすると同時に、聞いたことのある女の声が、先ほどまさにアリシアが言おうとしたことを言った。
「本当のディアナ・ルリーマ。──それは、王女なんかではない」
驚いてバッと顔を上げ、その声の主を見たアリシアは、言葉を失った。
(協力者に裏切られてこのザマ、か……)
ディアナの言っていた中で、細かい事情を聞きそびれていたの思い出す。
「おはようございますアリシア様」
アリシアは堅く唇を結び、にやりと口角を上げるその女を無言で睨みつけた。