第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II


 カイは考えた後、すぐ王家の所有する船を可能な限り動かすよう指示を出した。

 港を出入りする船の数は膨大だが、航路はだいたい決まっている。気の遠くなる作業ではあるが、それらをどうにか確認するつもりのようだ。逆に航路を外れるような船があればそれに狙いを定められる。



「私も船のどれかに同乗しても良いだろうか」


「ん?」



 イルヴィスが問えば、カイは一瞬渋い顔をする。



「だめだ、海は危険も多い。友好国の王子の身に何かあったら色々と……」


「お前にだけは言われたくないな。私の国で倒れて飢え死にしかけたやつはどこの誰だ」


「……もしかして俺か?」


「もしかしなくてもお前だ」



 イルヴィスがそう腕を組むと、カイは肩をすくめ苦笑した。

 それからイルヴィスをまっすぐ見つめる。



「しかし、お前が同行したところで、動かせる船の数は変わらないのだから、アリシア殿を見つけられる可能性が高まるわけでもないぞ?」


「わかっている。だが……大人しく待っていられそうにないからな」



 カイが目を見開き、小さな声で「お前、変わったな……」と呟いた。

 カイの言わんとしていることはわかる。前までの自分なら、意味がないとわかっている行動は絶対にとらなかった。


< 182 / 243 >

この作品をシェア

pagetop