第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
カイは考えた後、すぐ王家の所有する船を可能な限り動かすよう指示を出した。
港を出入りする船の数は膨大だが、航路はだいたい決まっている。気の遠くなる作業ではあるが、それらをどうにか確認するつもりのようだ。逆に航路を外れるような船があればそれに狙いを定められる。
「私も船のどれかに同乗しても良いだろうか」
「ん?」
イルヴィスが問えば、カイは一瞬渋い顔をする。
「だめだ、海は危険も多い。友好国の王子の身に何かあったら色々と……」
「お前にだけは言われたくないな。私の国で倒れて飢え死にしかけたやつはどこの誰だ」
「……もしかして俺か?」
「もしかしなくてもお前だ」
イルヴィスがそう腕を組むと、カイは肩をすくめ苦笑した。
それからイルヴィスをまっすぐ見つめる。
「しかし、お前が同行したところで、動かせる船の数は変わらないのだから、アリシア殿を見つけられる可能性が高まるわけでもないぞ?」
「わかっている。だが……大人しく待っていられそうにないからな」
カイが目を見開き、小さな声で「お前、変わったな……」と呟いた。
カイの言わんとしていることはわかる。前までの自分なら、意味がないとわかっている行動は絶対にとらなかった。