第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
「アタシの目的はこの女の誘拐」
「え?」
「アリシア様拐かしたのは、あくまでこの女に協力するふりをするためだったのですが、丁度いいのでこの船に乗るための運賃になってもらうことにしました」
「……つまり、ディアナ王女をどこか遠くに連れていくため、裏で運び屋をしているこの船に乗った。その運び屋への報酬がお金の代わりにわたし……ってこと?」
「さすが、理解が早いですね。身代金を請求するなり、どこかの金持ちに売るなり……あなたなら結構なお金になりそうですからね」
カーラはアリシアの反応を楽しむかのようにニコニコしている。
この前紅茶の話をしていたときの彼女とはまるで別人のようだ。
それに、そもそも何故ディアナを誘拐しようとしているのかがわからない。
「ディアナ王女のことが可愛くてたまらないって……前はそう言っていたのに」
ディアナのことが愛おしくて、その想いのあまり独り占めしたくて誘拐した……などというわけではなさそうだ。それはカーラがディアナに向ける冷えた目つきから感じられる。
「そうですね。可愛くて仕方なかったです。──彼女が本当の王女であると信じて疑わなかった頃は、ですけど」