第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
突き放すような言い方から、ディアナへの憎しみのような感情がにじみ出ている。
カーラは薄く目を瞑り、アリシアに言った。
「アリシア様は、母さんの自伝小説を読んだことがあるっておっしゃってましたね?」
「え?ええ……」
「あの本に、娘であるアタシのことは書いてあるのに、夫のことは少しも書かれていないと思いませんでしたか?」
「……言われてみれば」
アリシアは何度も読んだ本の内容を思い出し、こくりとうなずく。
「アタシは、母とある貴族の間に生まれた隠し子なんです」
「ある貴族?」
「アリシア様はご存知ないかもしれませんが、この国ではちょっと有名な家です。……クラム公爵家。アタシの父親はそこの当主でした」
驚いて目を見開いた。
クラム公爵家。その家の名なら知っている。
およそ15年前、屋敷が全焼するほどの大火事で、その一家全員が亡くなったと伝えられている……と姉から話を聞いた。
そして──
「嘘……」
ディアナの震えるような声が聞こえた。
「嘘ではありませんよ」
カーラはその反応を見てどこか満足そうに笑い、ゆっくりディアナの前まで行く。
「やっぱり知っていたんですね。そうです、つまりアタシとディアナ様は、異母姉妹に当たるんですよ」