第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
アリシアはまず、数日前に姉から、15年前に起きたクラム公爵家の火事の話を聞いたと話した。
「その火事で一家全員死亡。そう伝えられているようですね。だけど今日、ある日記を見つけたんです」
「日記?」
「はい。今姉夫婦が住んでいる家は、もともとクラム家の持ち家の一つだったそうです。その頃からあったと思われるクローゼットの奥から出てきた、クラム家の使用人による日記です」
アリシアはこの日カイが訪ねてくる直前まで読んでいた日記を思い出しながら言う。
「その日記に書いてあったんです。『火事の現場にいた使用人の一人が、生まれて間もないお嬢様を抱え、命からがら逃げてきた』と」
「そんな日記が……」
「はい。だけど何故かその赤子の行方については語られていませんよね。でも、その日記は信憑性が高そうですし、彼女はきっとどこかで生きているのでは……と思いました」
「どうしてそれがディアナと結びついた?」
「まずは年齢。火事が15年前なら、その赤子は現在15歳。ディアナ王女の年齢と一致します」
「15歳の少女など、探せばいくらでもいるぞ?」
「はい、もちろんそれだけではありません。あの日記に、公爵夫人の容姿を褒め称える内容も書かれていました。茶色に近い金髪に、蜂蜜色の瞳。ディアナ王女と同じです」