第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
「当時は俺もまだ幼かったはずだが、あの頃のことはよく覚えている」
王妃とクラム公爵夫人は、はとこに当たり、昔から仲が良く、交流もずっと続いていた。
妊娠した時期がほぼ同時で、お互いに励まし合う手紙のやり取りもしていたらしい。
しかしそんな折に、例の火災で、仲の良かった夫人の死が知らされた。
王妃はその知らせに受け、そのショックのあまり倒れた。その影響かはわからないが、その子どもも生きて産まれてくることはなかった。
幼かったカイも衰弱していく母の様子は恐ろしかったらしい。
火事から逃げ延びた使用人が、未熟な赤子を抱え城を訪ねて来たのは、王妃の子が死んだことがわかった翌日のことだった。
仲の良かったはとこと、自分の子どもを同時期に亡くした王妃は、はとこが遺した赤子を見て、泣き崩れた。
当たり前ながら、正常な精神状態ではなかった。一日中その赤子の前で泣いた末、突然「この子は私の子だ」と訴えだしたらしい。
夫である国王や専属医は、必死に説得したが、王妃は自分の子なのだと言い張り、終いには「この子が私の子だと認めないなら死んでやる」とまで言い出した。