第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
今日はポットだけでなくカップも陶器ではなくガラスのものの方が良い。
それから、いつも準備する砂糖や蜂蜜の瓶に加え、もう一つ別の液体が入った小瓶をトレイにのせた。今日のハーブティーは、これがあると格段に面白くなる。
イルヴィスとその客がいるという執務室前には、いつも通り顔なじみの守衛が立っていた。客間ではなく、イルヴィスの仕事部屋にいるということは、あまり格式張った来客ではないのだろう。
アリシアは一度深呼吸をして、「失礼します」と開けてもらった扉を通る。
部屋の中では、イルヴィスとその客らしき人物が談笑していた。
透き通るような美しい金髪と深い緑の瞳を持つ婚約者は、その美しい容姿のせいか、冷酷な人物であると噂されることも多い。だが、客人と話している今の彼は、いつもよりいくらか力を抜き、楽しそうに見えた。
「お茶をお持ちしました」
アリシアがテーブルにトレイを置くと、イルヴィスは「ありがとう」と微笑んだ。
その笑顔に、アリシアの心臓がドキドキと高鳴り出す。
……キスされたあの日からずっとこの調子だ。