第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
アリシアは砂糖を入れた後のお茶は一度も飲んでいない。そしてディアナにはカーラが戻ってくる前にこの計画を話してあったので、彼女も砂糖には手を付けていない。
「それで、これからどうするんですの?」
ディアナが不安そうな声色で問う。
「この人たちが眠ったところでここは海の上。逃げようがありませんわよ?」
「この辺りを通る船は何もこの船だけではないでしょう。どうにかして他の船に異変を知らせましょう」
「どうにかしてって、例えば?」
「大きな目立つ色布などがあればそれを旗のように掲げるとか。あ、あと煙を上げられると遠くからも気付いてもらいやすいかも」
いくつかの提案に、ディアナは納得したようにうなずく。そして自ら、煙を上げる役をやると申し出た。
アリシアはうなずいて、残っているオレンジブロッサムティーをカップに注いだ。
「わたしはこのお茶に睡眠薬を入れて、適当に言いくるめて船長に飲ませてきます。静かなことに気づかれたら厄介ですので」
「わかりましたわ」
「本当は大好きなハーブティーをこんな風に利用するのは不本意なのだけど……緊急事態だものね……」
アリシアは自分にそう言い聞かせながら、睡眠薬入りの砂糖がきちんと溶けるよう混ぜる。