第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
その船から聞こえてきた大きな声に、アリシアは驚いて立ち上がる。知っている声だ。
ディアナもハッとした様子で呟く。
「兄さん……?」
やはりカイの声か。アリシアは思わずディアナと顔を見合わせた。
声の似ている人なのかとも考えたが、やがて船は乗っている人の姿がわかるくらいまで近くに来て、声の主がカイ本人であることがわかった。
こちらに向かって懸命に叫ぶ彼に、ディアナは大きく手を振っている。
「兄さん!兄さん!」
「お前、ディアナかっ!?」
驚きと喜びに満ちた声の彼。
そしてアリシアの目は、その隣にいる人物を捉えた。
(イルヴィス殿下……)
海風を受けてなびく金色の髪。
彼がいることに気づいた瞬間、胸の辺りがキュッと締めつけられたように熱くなる。
来てくれた。見つけ出してくれた。
「アリシア殿もいるのだな!待っていろ、こちらの船をギリギリまで近づける!」
その言葉通り、やがて助けの船は、簡単に飛び移れそうなくらいにまで近づいてきた。
カイはこっちに向かって手を伸ばし、「飛べ!」と言った。
船同士の距離が近い上に、向こうから手を引いてもらえる。きっと飛び移るのはそう難しくない。