第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II


 その船から聞こえてきた大きな声に、アリシアは驚いて立ち上がる。知っている声だ。

 ディアナもハッとした様子で呟く。



「兄さん……?」



 やはりカイの声か。アリシアは思わずディアナと顔を見合わせた。

 声の似ている人なのかとも考えたが、やがて船は乗っている人の姿がわかるくらいまで近くに来て、声の主がカイ本人であることがわかった。

 こちらに向かって懸命に叫ぶ彼に、ディアナは大きく手を振っている。



「兄さん!兄さん!」


「お前、ディアナかっ!?」



 驚きと喜びに満ちた声の彼。

 そしてアリシアの目は、その隣にいる人物を捉えた。



(イルヴィス殿下……)



 海風を受けてなびく金色の髪。

 彼がいることに気づいた瞬間、胸の辺りがキュッと締めつけられたように熱くなる。


 来てくれた。見つけ出してくれた。



「アリシア殿もいるのだな!待っていろ、こちらの船をギリギリまで近づける!」



 その言葉通り、やがて助けの船は、簡単に飛び移れそうなくらいにまで近づいてきた。

 カイはこっちに向かって手を伸ばし、「飛べ!」と言った。


 船同士の距離が近い上に、向こうから手を引いてもらえる。きっと飛び移るのはそう難しくない。


< 217 / 243 >

この作品をシェア

pagetop