第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
「ディアナ王女、先に行ってください」
アリシアが言うと、ディアナは少し不安そうながらもこくりとうなずき、意を決したように飛び移った。
カイに強く手を引かれ、上手く移れたようだ。泣きながらへたりこんでいる。
「アリシア殿、あなたも早く!」
アリシアが助けの船がいる側へと行き、カイがそう言ったちょうどその時。
グラッと大きく船が揺れた。その揺れのせいで、向こうの船と少し距離が開く。飛び移るのが不可能というほどではないが、不安な距離だ。
「すまない、もう一度近づけるから少し待っていてく……」
そう言いかけたカイが、目を見開いてアリシアを──いや、正確にはアリシアの少し後ろを見た。
言葉を失ったカイの代わりに、その隣にいたイルヴィスが、焦った声で叫んだ。
「アリシア!後ろ!」
「後ろ……?」
言われて振り返ると、目に飛び込んできた光景に思わず息を止めた。
「逃げないでくださいよ……何で邪魔するんです……」
アリシアの真後ろに、睡眠薬がきれ、目を覚ましてしまったらしいカーラが一人で立っていた。
しかも、その手にはナイフが握られていた。刃先はまっすぐこちらに向けられている。