第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
そんなことを言われても、この苦味を再び味わおうという気にはなれない。
「ディアナ、後腐れなくアリシアの友達になりたいなら飲んでおいた方が良いかもしれない」
ティーカップに手を伸ばそうとしないディアナに、イルヴィスがこっそり耳打ちする。
「先程言った通り、これはアリシアなりの仕返しだ。裏返せば、この薬草茶を飲み干せば、完全に許そうと思っているはずだ」
「っ、なるほど」
ディアナがアリシアにしたことを思えば、ずいぶん可愛らしい復讐にも思える。
これで許してもらえるのなら、とディアナはカップを手に取り、一気にあおる。
「うぐっ……」
一瞬で口の中に広がる苦味。前言撤回。全然可愛らしくない。
ディアナは飲んだお茶の倍の量の水をすぐさま飲む。お茶を淹れているのに、何故となりに水入りのグラスがあるのかと思っていたが、このためだったのか。
「の、飲みきりましたわ……」
「ポットにあと三杯分くらい残ってますよ」
「嘘ですわよね……」
ディアナが絶望に満ちた声を上げたところで、イルヴィスとアリシアに声がかかった。
「イルヴィス殿下、アリシア様。馬車の支度が整いました」
そう。今日は二人が国に帰る日だ。