第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
馬車の準備が終わるまでお茶を飲みながら少し話をしよう。アリシアにそう誘われ時間を作っていたのだ。まさかこんなに苦いお茶を飲まされるとは思っていなかったが。
「行ってしまわれるのですね」
一気に寂しさが押し寄せてくる。もうしばらく会うことはないだろう。
「アリシア。すっかり言いそびれていたのですが、使用人たちが貴女にずいぶん酷いことをしていたようですね。ごめんなさい」
「気にしていませんよ。それに、彼女たちがわたしに嫌がらせをしたのは、ディアナのためなんですよね?愛されてるじゃありませんか。きっと愛されているのは、『王女だから』ではなく『ディアナだから』なんでしょうね」
「え……」
「わたしは、ディアナがどのような選択をしても応援しています」
アリシアは、そう言って優しく微笑む。
ディアナは胸元でギュッと拳を握った。
「はい」
アリシアは立ち上がり、イルヴィスの後について馬車の方へと行く。
最後まで見送ろうとディアナも立ち上がると、その途中でカイもやってきた。
「そうか。二人はもう帰るんだな」
こちらは全然寂しそうではない。
放浪癖のある兄ならば、隣の国くらい、思い立ったその日に最低限の従者だけ連れて行ってしまいそうだ。