第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
それにしても何故旅人の彼が王城に?
疑問を投げかけようとイルヴィスを見ると、彼はあ然とした様子で青年を見ていた。
「カイ……まさか先ほど言っていた命の恩人というのは……」
「間違いなく彼女だ!」
青年は興奮したようにうなずく。
「高貴な身分だろうとは思っていたが、王城勤めの女性だったのだな!お茶係なのか?いやあ、後で探してもらう手間が省けた」
「いえ、わたしは……」
彼はアリシアのことを城で働いている女なのだと勘違いしているらしい。
アリシアが否定するべく口を開こうとすると、立ち上がったイルヴィスに肩を抱き寄せられた。
「違う。お前のところと違ってお茶係などという役職はない」
「そうだったか。ならばお前の侍女か?」
「婚約者だ」
「……え?」
青年はポカンとしたように口を開き、「コンヤクシャ?」と呟く。
「私の婚約者、アリシア・リアンノーズだ」
イルヴィスははっきりとした口調で、ゆっくり繰り返した。紹介されたのでアリシアも深くお辞儀をする。
青年はしばらく目を白黒させていたが、やがて頭を抱え「うわああ!」と叫んだ。