第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
「お世話になりました。とても楽しかったです」
「それは良かった」
カイはにやりと悪戯っぽく笑う。
「また来ると良い。そうだな、次に来るとしたら……新婚旅行か?」
アリシアは困ったような表情を見せるが、イルヴィスは「考えておこう」と口角を上げてうなずいた。
そして二人が馬車に乗り込むと、馬車はゆっくりと動き出す。
ディアナはその姿が小さくなるまで、カイと一緒に見送った。
「イルのことは諦めたんだな」
馬車がすっかり見えなくなった頃、隣でカイが小声で聞いてきた。
「ええ。だってアリシアに敵うはずありませんもの。……でも少し残念なのは、アリシアはイル様にどれだけ愛されているのか気づいていないところですわね」
「はは、確かにな」
カイは愉快そうに笑った。そして、ふと真剣な表情を浮かべてディアナを見た。
「……ディアナ。すっかり話をし損ねていたが、聞いてもいいか?」
何となく話の内容に察しがつき、ディアナも表情を引き締めてカイの方へ体を向ける。
「何でしょう」
「自分の出自について、いつから知っていた?」
「ディアナは自分が本当の王女ではないと知っている」という話は、恐らくアリシアづてに伝わっている。
そのうち聞かれるだろうと思っていたので、ディアナは落ち着いて答えた。