第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
「それは、お前が自分の出自について知らないと思っていたからだ。お前から王女という地位を奪ってまで想いを伝える気にはなれなかった。だが──」
カイはそっとディアナの頭を抱き寄せて、額にキスを落とした。
「知っていたのなら、もはや遠慮するのも馬鹿らしいからな」
「っ、でも」
「やはり、俺のことは兄としてしか見られないか?」
「それ、は──」
不安そうな目をしてディアナを見つめるカイに、思わず言葉を詰まらせる。
誰かを好きになり、その想いを伝えることに勇気がいるというのは、ディアナもよく知っている。ましてや今まで兄妹として過ごしてきた相手に気持ちを告白するのは、いったいどれだけ勇気がいるのだろう。
「……わかりました。ではこうしましょう」
ディアナはふーっと息を吐いてカイを見上げる。
「これから頑張って、私を口説き落としてくださいな。その結果もし私が兄さんのことを男性として好きになってしまったら……まあそれから色々考えますわ」
カイは驚いたように目を見開き、しだいに嬉しそうな色に染まっていく。
「それは、俺がお前のことを好きになっても良いという許可だと思っても?」
「っ、言っておきますけど、私の初恋を見たらわかる通り、理想は高いので!」
慌てたようにそう付け足したディアナの頭を、カイは「望むところだ」と言ってそっと撫でた。