第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II



「あの、何故わたしは殿下と同じ馬車に乗っているのでしょう……」



 ガタガタと馬車に揺られながら、アリシアは問いかけた。

 行きと同じように馬車は数台あったので、アリシアは当然ノアと一緒に後方のものに乗るつもりでいた。しかし、イルヴィスは自分が馬車に乗り込む直前、アリシアの手を引いて、強制的に同じ馬車へと乗せた。



「不満か?」


「ま、まさか……!」



 もちろん不満なわけはない。

 だが、こんな至近距離で、しかも二人きりだ。ドキドキして、外の景色もまともに見られない。



「この国にいた間、あまり貴女と一緒に過ごせなかったからな。せめて帰りくらいはと思ったんだ」


「そうだったんですね!」


「……何故こちらを向かない?」



 ずっと目線を下にむけていたが、とうとう指摘されてしまった。

 そんなの緊張するからに決まっていよう。


 だがそんなことを言えるはずもなく、アリシアは誤魔化すように声を上げた。



「あ、そうでした。ずっと渡そうと思っていたのですけど、これ、よろしければ」



 手渡したのは、カイと街へ出た時に買ってきた、シーグラスのピアスだ。

 城に戻ってきてからもバタバタしていて、渡すのを忘れていた。



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