第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
「その、前に貴女の許可を得ず思わず唇を奪ってしまったことがあったのだが……いや、忘れているならそれで良い」
アリシアはカッと頬が熱くなるのを感じる。いつの話をしているのかはすぐにわかった。
「忘れてるわけないじゃありませんか……。なかったことにした覚えもありませんし……。むしろずっと気にしていたというか」
「気にしていた?そんな様子少しも見せなかったように思うが……」
「気をつけていたんですよ!顔に出ないように!」
つい大きな声で言ってしまい、慌てて口を押さえる。
イルヴィスはきょとんとした表情で「何故だ?」と問う。
「だって、殿下の方こそ全く気にする様子もなくて……深い意味はなかったのかも、わたしだけ色々考えてるのなら馬鹿みたいだと思って……」
ああ、どうしてこんなこと言わされているのだろう。
恥ずかしさに耐えきれず、両手で顔を覆う。
「……そうか。悪かったな」
イルヴィスは穏やかな声で謝罪を口にしながら、顔を隠すアリシアの手をとる。
そしてまた、彼の端正な顔がゆっくり近づいてきた。
「殿下……」
またキスをされる。そう思って再び目を閉じた。