第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
多分、王子に招待されたのだという話をすれば、心配はされても反対はされないだろう。あの伯爵は、何だかんだ娘に甘い。
「行ってしまうのか、アリシア殿。また次に会うのを楽しみにしている!」
「はい。カイ様もグランリアでのご滞在を楽しんでくださいね」
アリシアがそう言って部屋を出ようとすると、「待って」とイルヴィスに呼び止められた。
「アリシア、その……なんだ……」
彼は何かを言いたそうに視線を彷徨わせる。が、すぐに諦めたように首を振った。
「今日も茶の準備をありがとう。また、明日」
「……はい!失礼いたします」
言うのを止めたようだが、彼はいったい何を言おうとしていたのだろう。
少し気になりはしたものの、部屋を出る頃にはそんなことは忘れ、初めて足を踏み入れることとなる隣国への期待感で、アリシアの胸はいっぱいになっていた。