第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
「お嬢様!大変です!」
夕食を終え部屋に戻ったアリシアに、ノアが血相を変えて駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
「申し訳ありません!少し部屋を出て戻ってみると、お嬢様のドレスが……!」
風呂に入ってから着るためノアに出しておいてもらったワンピースが、大きく切り裂かれていた。
さらに、部屋の中もあちこち散らかされていて、無惨な様子になっている。
「……盗まれた物とかはないのね?」
「はい、恐らく」
「部屋を荒らすことだけが目的という感じの荒れ方だものね」
アリシアはふうっと息をつき、バルコニーの方へ足を進める。
置いてあった小さな観葉植物の鉢も割られ、土が散乱している。植木鉢の欠片をそっとつまんで、ノアに言った。
「ワンピースは替えがいくつかあるからそれを用意してちょうだい。それから新しい植木鉢を借りてこられないかしら。この植物が可哀想」
「かしこまりました。あの、お嬢様」
「さっきもね、わたしの分の紅茶だけ信じられないぐらい苦かったの。やっぱりお茶は美味しく飲むものよね」
わたしも前みたいに仕返しのために苦いお茶淹れるのは止めよう、とアリシアは力なく笑う。
「いったい誰がこんなことを……」
呆然とした様子のノア。アリシアにだってそれはわからない。