第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II


 ニーナは少し考え込み、やがてニヤッと笑った。



「人目のない部屋で、ふとした瞬間目に入ったアリシア様の綺麗なうなじに、求めるように唇を何度も落としていく殿下。だけどそのうち物足りなくなって、ドレスを脱がせようと手を伸ばしたりとかして……。それに気がついたアリシア様は、こんな時間に、しかも自分たちはまだ結婚していないのだと抵抗を試みるんです。だけどそれも虚しく──」


「待って待って待って!」



 何だか不穏な感じになってきたので、アリシアは慌てて止める。

 ニーナは「ここからが良いところなのに」と不満そうである。



「ニーナさん、あなたそれ下手したら王族を侮辱した罪に問われるわよ」


「アリシア様が言わなければバレようがありませんよ」


「それはそうだけど……ああ何だろう、だんだんわたしの中であの漫画の主人公のイメージが音をたてて崩れていくんだけど」



 『黒髪メイドの恋愛事情』

 それが、悪役令嬢アリシアが登場する漫画の名前だ。そして、題名にある黒髪メイド、つまり主人公(ヒロイン)こそが目の前の彼女、ニーナである。

 しかもニーナには、アリシアと同じように前世の記憶がある。


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