第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
アリシアは部屋の前の水溜まりを、歩いてもドレスや靴が濡れなくなるぐらいまで雑巾で拭き取ると、廊下に出てある場所へ向かった。
ある場所。それは、この城の給湯室だ。
どこにあるのかはカイに事前に聞いてあり、その通りに行くと目的地はあっさり見つかった。
さすがに他国の王城で招かれてもいない部屋に好き勝手入るわけにはいかず、アリシアは部屋の出入口が見える場所にこっそり隠れた。
すると、五分もしないうちに一人の女が出てきた。
分厚いメガネをかけた彼女は、20代前半ぐらいといったところか。服装はこの城でよく見るメイド服に似ているが、色はもう少し明るく、装飾もいくらかあり少し立派に見える。
(あの人で多分間違いないわね)
アリシアはそう確信すると、音をたてないようこっそりと移動して、彼女の背後に回る。
そして、後ろから手で彼女の口を塞ぎ、耳元で言った。
「ねえ、貴女がお茶係のカーラ?」
「ふぐぐ……ん……が」
「騒がないで。別に危害を加えるつもりはないの。そっちと違ってね」
口を塞がれ腕を掴まれたた彼女は必死に抵抗しているが、残念ながらアリシアよりも小柄で非力である。