第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
聞き間違いか?というように首を傾げるカーラに、アリシアは笑って説明を始めた。
「正確に言うと、ジルさんが書いた自伝小説が大好きなのよ」
「母さんの自伝が?」
「ええ。前々からよく通っていたカフェの娘さん、というか今は店主なのだけど、彼女に教えてもらって読み始めたの」
あれは確か学園に通い始めた頃だっただろうか。
Cafe:Lilyというアリシアのお気に入りのカフェで、普段あまり本を読まないはずのその店の娘・リリーが、そこそこ分厚い本を勧めてきたのだ。その内容は、長年ルリーマ王国の城でお茶係をつとめてきた女性の自伝だった。
お茶係として初めて登城した時の緊張から、王族の人たちに出したお茶が気に入ってもらえた時の喜び、引退した時の寂しさまでがユーモラスにつづられており、引き込まれるように読んだ。
最初はカフェでリリーに借りて読むだけだったが、そのうち自分でも買って、家でも何度も読むようになった。今でも自室の書架には取り出しやすい位置に並べられている。
「それで、あの本の中に娘の話もちょっとだけ出ていたでしょ?カーラって名前もあったし、『私の背中を見て育った娘が、今は同じ城のお茶係を目指している』って記述もあったから、もしかしたらと思って」
「なんと……!」