第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
「そうですよねえ……、うん。アタシが見たいのは、お茶を飲んで幸せそうにする人の姿であって、お茶の苦さに苦悶の表情を浮かべる姿ではないんですよね、本当は」
ズーンと沈みこんだ様子で、もごもごそう言ったかと思うと、今度は大きなため息をつく。
そして「こんなことしてたら母さんに怒られる」と意を決したように顔を上げた。
「あの!アリシア様がおっしゃった通り、あなたの分のお茶だけ苦くしたのはアタシです!すみませんでしたっ」
先ほどまで誤魔化そうとしていた割にあまりに潔い。驚いて目をぱちくりさせるアリシアをよそに、カーラは早口で続ける。
「でも苦いだけで体に害があるものを混ぜたわけでは……って、苦くするため混ぜたお茶の種類もバッチリ見抜かれてるんだった……」
「えっと……何故そんなことをしたの?と問うべきなのよね」
苦いお茶の件を彼女が認めたら何を追及するのか決めていたはずなのに、すぐにはその内容が浮かばず妙な聞き方をしてしまった。ジルの自伝小説の話のせいですっかりその内容が頭から消えてしまっていたようだ。
アリシアは一度咳払いをして、今度は腕を組み、声も少し強気な感じで聞き直す。