第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II


 カーラは胸に手を当て微笑ましそうに目を細める。それから少し非難するようにアリシアを見た。



「アタシたちは、あんなに可愛いディアナ王女の恋が報われないわけがないと信じていました。だけど数ヶ月前、その相手が別の女性との結婚を決めたという情報がこちらに入ってきたのです」



 その当時のディアナの嘆きようは、本当に見ていて痛々しいほどのものだったという。

 一日中泣きじゃくって部屋に籠り、食事もほとんどとらず、城の者たちはたいそう心配したそうだ。



「なのに、ようやく傷もいくらか癒えてきた今、その王子が婚約者を連れてディアナ王女の前に現れたのですよ!?あのか弱く儚い王女が耐えられるはずがないでしょう!」


「……確かにディアナ王女と初めて出会った時、彼女泣いていたわね」


「ええ、アタシたちの間でも噂になったので知っています。それで誰かが言い出したんですよ。『あの婚約者をどうにか城から追い出せないか』って」



 いくら何でも、自分たちの力で王子と婚約者の仲を割いてディアナの恋を実らせるということは不可能。ならばせめて今までと同じように、ただの幼なじみとして、僅かであってもイルヴィスと楽しい時間を送ってもらいたい。

 そのためには、アリシアが邪魔だったというわけだ。


< 86 / 243 >

この作品をシェア

pagetop