第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II


 うっとりとした表情でアリシアの頭を撫でるレミリアを見て、エドモンドがあっと声を出す。



「そうだ、直接お祝いしないとと思ってたのにすっかり忘れてた。アリシアさん、グランリア王国の第一王子とのご婚約、おめでとうございます」


「ありがとうございます、エドモンド様」


「いやあ、だけどまさか、義妹が隣国の王子妃……ゆくゆくは王妃だなんて、考えもしなかったな」



 しみじみとした様子のエドモンドに、アリシアは「自分だって少し前までは思いもしていなかった」と心の中で返す。

 突然イルヴィスの婚約者に決められ、そのせいでこの世界が前世で読んだ漫画の世界だと気づいて……。


 思わず物思いにふけりかけたアリシアの顔を、レミリアがニヤニヤとした笑みを浮かべて覗き込んできた。



「あの王子様の婚約者だなんて、アリシアちゃんは辛い思いをしていないか心配していたのだけど、今回の旅行も一緒に来ていたりするところを見ると、上手くやれているみたいね」


「辛い思いだなんて……殿下はとても良いお方です」



 アリシアはギュッと自分のスカートをつかみながら答えた。イルヴィスが良い人だというのは本心だ。だが、辛い思いをしていないというのは嘘になるのかもしれない。


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