第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II


 いや、辛い思いをしているというほどではないのだろうか。だけど何だかこう──近頃彼のことになると胸の辺りが少しモヤモヤすることがある。


 今日もこの屋敷へ出発する前に一言挨拶をしておこうとイルヴィスを探していたのだが、ようやく見つけた彼は、ディアナと庭を散策している姿だった。

 相変わらず彼女の前では優しく慈愛に満ちた表情をしており、それを見た瞬間、モヤモヤとした複雑な気分になった。

 彼が誰かに優しい表情を浮かべているのを見てモヤモヤするなんてどんなに性格が悪いんだと嫌になり、気がつけばそこから目をそらすように逃げてきてしまったのだ。

 カイには声をかけてきたが、イルヴィスと、それからディアナには黙って出てくる形となってしまった。また戻った時には謝罪を入れておかねば。



(そういえば、何も知らないあのディアナ王女の親衛隊(城の使用人)たちは、王女の恋路を邪魔するわたしが消えて喜んでいるでしょうね)



 アリシアが城にいる間、様々な嫌がらせをしてきた使用人たち。カーラ以外の実行犯の姿は直接知らないが、喜んでいる様子は容易に想像できる。

 その人たちに、思惑通りに事が進んだと思われるのは癪だが、アリシアが突然現れた部外者である感じは否めない。彼らには、アリシアに気を使うことなく幼なじみ同士でいる時間もきっと必要だ。


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