第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
そんなことを考えている時、ふと近くから爽やかなレモンの香りがしてきた。
横を見ると、レミリアが二杯目の紅茶にレモンの果汁をたっぷりと搾っている。視線に気が付いたレミリアは、半分言い訳をするように言った。
「アリシアちゃんが淹れてくれた紅茶はこのままで十分美味しいわよ。でも少し味を変えたらもっと楽しめるかなって。アリシアちゃんもどう?」
「もちろんレモンやミルクを入れても美味しいと思いますよ。わたしにもください」
「使って使って。たくさんあるの」
「姉様レモンお好きでしたっけ?」
紅茶にも結構たっぷりと使っているし、たくさん買い置きしてあるということはかなりの好物なのだろう。だが、実家にいた頃のレミリアがレモンを好んでいたような記憶はない。
「ああ、違うの。この間お義母様にたくさん頂いてね。これからきっと酸っぱい物が食べたくなるだろうからって」
「酸っぱい物が……?」
首を傾げるアリシアに、レミリアはエドモンドと目を合わせ幸せそうに微笑んでから言った。
「アリシアちゃん。あたしね、エド様との子どもを身ごもったの」
見た目ではまだあまりわからないけど。レミリアはそう付け足して愛おしそうに腹部を撫でる。