ふしだらな猫かぶりからの溺愛
どうにかしようにも、こんなに人の多いところでさらに大月さんと菫さんに、瑠衣が私を呼び、こんなにべったりくっついているところを見られてしまってはどうにも出来ないし諦めるしかない。

それに瑠衣は菫さんが名前を呼んだことも、大月さんが目が飛び出るほどに驚いていることも、何も気にしてないだろうから。


「……瑠衣」

菫さんが名前を呼んでも応えないのに、私が呼ぶと顔を傾けて嬉しそうに私と目を合わせてくれる。

「んー、なに?」

「どうしてここに?」

「可愛い後ろ姿見つけたから〜」

あぁ〜、せっかくあと少しでホテルから立ち去れそうだったのになぁ。見られちゃったか〜。


「私ってよくわかったねー」

「俺が仁那を見間違えるはずないでしょ」


目の隠れるほどの長さの黒髪のウィッグにレンズの厚いダサイ形の眼鏡。
高校生のようなダッフルコートにストレートのデニムという、今日も今日とて野暮ったい格好の私。

そんな私を瑠衣は見たことないのに、溶けるような笑顔でさも当然というように言われた。

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