ふしだらな猫かぶりからの溺愛
「……で、見事今年のトップアーティスト賞を受賞されましたashの皆様です!」
壇上を神奈のあとに続いて歩き、司会者のいる中央まで行くとワッと歓声があがる。
あ、社長だ。
周りを軽く見渡すと、グレーの光沢あるスーツで相変わらずヤクザみたいな顔のおっさんがこっちを見ている。
その表情はどこかニヤニヤと含みのあるもので俺を見ているから、こちらもジッと見返す。
さっき仁那いたけどどういうこと?
と視線に込めると、一瞬驚いたように軽く目を見開いてからすぐに肩を竦めてすっとぼけた態度をとられた。
あれは絶対なにか知ってるな。
……まあ、いいやぁ。早く終わらせてこの後仁那にじっくり聞くし。
「デビューしてから飛ぶ鳥を落とす勢いでヒット曲を連発されている皆様ですが、RUIさんが作詞をされたのは"真紅"のみですよね」
社長と睨み合っていたら突然司会者から俺に質問がきた。
神奈が「質問ちゃんと聞いてたか?」と目で訴えてくる。