ふしだらな猫かぶりからの溺愛

「そしたら事務所の多目的ルームのとこでROCKの記者の人と事務所の人が出てきて、『gris』って言ったのを神奈がなんか誤魔化そうとしてて、かくれんぼしてんのかなぁって」

「え、えへ……ふふっ」


まさか勝手に始めたかくれんぼをとっくに見つかっていたなんて。

予想以上の瑠衣の鋭さと観察眼にもはや言いわけもなく驚いていたら、
瑠衣の吐息を首に感じてくすぐったさに思わず笑ってしまった私の鎖骨あたりにチリッと小さな痛みが走る。


「あ、あんまり見えるとこにつけたらダメだからね」

甘く吸われた痕がついたことに軽く抗議をすると、

「背中とか〜?」

と私の首元に顔を埋めたままの瑠衣が、いたずらっ子のように私の着ている野暮ったいサイズの合わないセーターの裾から手を入れて背中を冷たい指で撫であげた。

ひゃっ、とその冷たさに驚いて声をあげてから、指の触るその場所にふと思い当たることがあった。


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