ふしだらな猫かぶりからの溺愛
どこまでも魅力的で圧倒的パフォーマンスで、ashは間違いなく今日の主役だった。



なんてかっこいいんだろう。

これが、大人気のインディーズバンド。


今日の興奮と経験が私の中で形になるように、頭の中で曲のフレーズと歌詞が次々に湧いてくる。


私も、歌いたい。
曲を作るのが本当に楽しい。

衝動を抑えられず、ほんとはもう少し他のアーティストも聞いて行こうと思ったけどやめて、もう帰ることにした。


ashの演奏時間が終わるとぼちぼち帰るお客さんもいて、合わせて私も出口に向かう。



地下にあるライブハウスの出入口は狭い階段でみんながゆっくりと上がって行くのについて上がろうとすると、腕を引かれてその列からはみ出した。

「あ〜っ、待って待って!」

「え?あ、秦野さんー!」

「なに、仁那ちゃんもう帰るの?」

「はい、ashがすごく楽しかったので今日はもう帰ります!」


笑顔の私に秦野さんも笑顔を返してくれるけど、そのあとちょっと困ったように眉を下げる。
< 30 / 254 >

この作品をシェア

pagetop