ふしだらな猫かぶりからの溺愛
「あーあ、今日は普段の格好で来ちゃったの失敗したなぁ〜」

諦めて机に突っ伏すと、頭上で不機嫌な声で神奈が不満を口にする。


「なんだ俺と会いたくなかったのか?」

「んー、そうじゃないけど……神奈と話せて嬉しいよ」

「……仁那、やっぱり瑠衣のこと」


その答えに少し困って緩く笑うだけにしてしまった。

だけど、神奈には伝わったみたいでそれ以上深く聞かないでおいてくれた。


「仁那何してるんだ?スタジオにいたってことは音楽続けてるんだよな?」

「あ、そうそう!今度メジャーデビューすることになったよ」

「え!まじか!すごいな、おめでとう!」

「へへ、神奈に褒められると嬉しいなー」


兄のような存在でさらに音楽の先輩でもある神奈に褒めてもらえることは、私にとってかなり幸せなことだ。


「事務所は?レコード会社はどこだ?」

その質問に少し悩んで、そして伝えることにした。

……本当のことを。



「事務所、スイッチだよ」


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