ふしだらな猫かぶりからの溺愛

ブッ！と神奈が飲んでいたお水を吹いた。


「ちょっ……神奈、大丈夫？」

ゲホゲホとむせる神奈に手を伸ばすと片手を上げて大丈夫だと知らせてくる。


「まっ……、まじかよ、うち……？」


まだ苦しそうに涙目で、目にかかる長めの前髪の間から見てくる。


「え、それって瑠衣には……」

「うん、知られなくないから秘密にしてる」

「名前は？仁那じゃないのか？」

「違う名前……grisって言うの」

「グリ？」

「フランス語で灰色」

「……ああ、お前にぴったりな名前だな。綺麗だもんな、それ」


そう言って神奈に私の瞳を覗くように見つめられて、恥ずかしくなってちょっと頬が紅潮した。



私の瞳は祖母譲りの灰色をしている。



私は自分の瞳の色がとても気に入っていて、必然的に灰色も好きだったので自分の芸名をgrisにしたのだ。