ふしだらな猫かぶりからの溺愛
「あー!いや、違う違う!ぜんぜんそんなことじゃなくて」

「よ、よかった〜、私一度行っただけで出禁にでもなったかと……」

「むしろ逆っていうか」

「逆?」


そこで神奈さんが初めてちょっと言いづらそうに視線を彷徨(さまよ)わせて、それから困ったように眉を下げた。


「仁那ちゃん……彼氏いる?」

「……へ?」

「ちょっと!!」


私の間抜けな返事とそれまで黙って見守っていた藍の怒りのこもった声が見事に被った。


「あー、ごめんね。急になに言ってるんだって思うだろうけど、むしろ俺もなに言ってんだって思ってるんだけど最後まで聞いて欲しい!」

神奈さんが長くて少し節のある綺麗な手を顔の前で合わせる仕草を慌てて止めに入る。


「いいですいいです!ぜんぜん聞くんでそんなことしないでください〜っ!藍も、ね?聞くもんね?」

「……仁那がそういうなら聞くけど」

「あの、神奈さん続きを」

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