ふしだらな猫かぶりからの溺愛
「いやほんと俺なに言ってるんだろうな……仁那ちゃんまじでごめんね」


ちょっとさっきまでよりも砕けた言い方の神奈さんに安心感と親近感が少し湧いた。



「じつはうちのボーカルってとんでもなく女性にだらしないんだよ……」

「ボーカル……ってRUIさん?」

「そう、RUIはあの通り顔がめちゃくちゃ良いから女の人からかなり誘われるんだけどね」

「なるほど、そんな感じですね」

「それで、本人は別に恋愛感情とかなく、気分が乗ればふらふらと誘われるままに行っちゃって」

「うわぁ……」


頭が痛いのか神奈さんが頬杖をついた右手でこめかみのあたりを触る。

綺麗な切れ長の目が嫌そうに歪み、眉間にシワを寄せる神奈さんは相当RUIさんの女性関係に困っているようだった。


「あ、そういえば今日もライブハウスの近くでRUIさんっぽい人見たような……モデルみたいな綺麗な女の人とホテル入って行ってましたねー」

「あぁー、それ絶対RUIだわ……今日、あそこの近くで夕方まで練習あったから」

やっぱり見間違いじゃなくてRUIさんだったらしい。

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