ふしだらな猫かぶりからの溺愛
先に事務所に到着して、すでに中に案内されている取材の方たちの待つ多目的ルームへと菫さんの文句を聞きながら向かう。



「お待たせしました」

「はじめまして、雑誌ROCKの大月と申します。今日はよろしくお願いしま……」


私の入室のタイミングで立ち上がり頭を下げて挨拶をしてくれた大月さんと言う男性と、隣の女性が二人同時に顔を上げ固まってしまった。


「はじめまして、grisと申します」

「あ！し、失礼いたしました……あの、grisさん今日は取材を受けていただきありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」

「ふふっ」

「え？」


大月さんのあまりの戸惑いっぷりに思わず声が出てしまった。

「あ、ごめんなさい！こんな格好の人間が来たら誰だって驚きますよねー」


今日の私も例に漏れず、野暮ったさ満点の分厚いメガネと顔が半分くらい隠れる黒髪三つ編みウィッグ、さらに今日は変な柄のダボっとしたロンTのワンピースを着ている。

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