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ぺらり、とページをめくる。
それはなんとなしに本屋で購入した少女漫画だった。

「あのさぁ、りお。あんたなんでこんなところで少女漫画とかよんでんの?」

高校からの友達である彼女ーーー神崎 美琴が胡乱げに私にいった。
ちなみにここは居酒屋である。確かに居酒屋で少女漫画読むなんておかしいか。とはいえ、読むのはやめないんだけど。
私は変わらず少女漫画を読みながら答える。

「んー」

「んー?じゃねぇんだよ。こっちは元彼の話を聞いて欲しいのにさ〜」

「だって彼氏いない私が聞いてもさぁ。わかんないし、彼氏の気持ちとか。それならグーカル先生に聞いた方がまだ答えてくれるよ」

「冷たいなぁお前は!それが高校来の友達に言うことか〜?だいたいアイツもさぁ、好きな女他にいるなら言えよって話だよね!ズルズル二股かけやがって……あ、やだ。またいらついてきた」

そう言って美琴は苛立たしそうにレモンサワーのジョッキをどんっと置いた。

それを見ながらようやく私も少女漫画を閉じる。私の名前は栗原 りお。
華の20歳である。そして、今年から20代になってしまった女でもある。

なんかさ〜〜〜〜。19の時は全く焦ってなかったのに20歳になるとなぜかめちゃくちゃ焦るようになってくるのってなんで??
周りにデキ婚した人がいて結婚とか妊娠って言葉が現実的になったから?
それとも20代に足を突っ込んで自分の将来が朧気ながら見えてきたからかもしれない。いやーその両方かな。

ともかくーーー

恋がしたい!彼氏が欲しい!!

ちなみに私は大学生ではない。
短大卒なので今年から社会人として働いている。新入社員として働いていると、すごく思う。
学生に戻りたい……………!
しかし時間の流れは悲しいかな。時を巻き戻すことは出来ないのである。せめて今からでも薔薇色の人生歩めないかなぁ………。彼氏欲しい………恋がしたい………。

私はついさっきまで読んでいた少女漫画を椅子の上に置き、頼んでおいたカシスオレンジに手をつけた。

「ところでりおはどうしてまた、そんな突然少女漫画なんて読んでんの?あんた好きだったっけ」

「高校の時はねー。最近は全然」

「んじゃどうしてよ?」

「んー………恋愛ってどんなものだっけ、って思って」

そう言いながらカシスオレンジに口をつける。お、甘い。それでいてアルコール臭い。うわ、待てよ。甘すぎるわ。なんだこれ砂糖水か??
ここのカシスオレンジはハズレだわ。一口飲んでそれをテーブルに戻すと、目を丸くしている美琴と目が合った。
彼女はポケッとした顔をしていたが、やがてすぐに大爆笑を始める。
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