俺様天使の助手になりまして
今そこにあった祠がない。木がない。おまけに、足元がスカスカする。
「じ、地面がないぃ!? ぎゃあああぁぁ!」
盛大に叫びながら、わたわたと手を振り回した。
人間は飛べないって分かっているけど、必死だ。
はるか下にこんもり茂る緑と、祠の屋根が見える。しかも、それがどんどん小さくなっていって、サーッと血の気がなくなった。
「や、やだっ。お、落ちる、落ちる! 落ちるー!!」
「静かにしろっつーの。うるせぇんだよ」
「だって、だって、落ちるうぅぅ……って……あれ? 落ちない? ……どうして?」
「ったく。俺の格好は、そのコスプレってやつじゃねぇぞ。その証明で飛んでるんだ。これで分かったか」
空中で私は、外人に荷物のように抱えられていた。
外人の背中についている翼が、わっさわっさと動いている。
それ偽物じゃなかったの? これって、本当に飛んでいるの? 催眠術とか、暗示とか、そういうのじゃないの?
にわかに信じがたいけれども、空中で静止している私の横を、カラスが飛んで行った。
これって、まさか。本当に、天……。ううん、ちょっと待って、絶対違う。これはきっと天使に化けているんだ。
「あ、アクマ!?」