俺様天使の助手になりまして

 剣道は大好き。練習は厳しくて辛いけれど、試合のぴりっとした独特な緊張感が好きだ。

 一本決まった時は、爽快感で胸が一杯になる。狙い通りに決まると、鳥肌が立つ。

 本当は、真帆りんのことを羨ましいと思っている。剣道だってやりたい。体がウズウズする時がある。

 でもママは、パパを失くしてから一人で頑張って私を育ててくれている。わき目もふらずに一生懸命。そんなママを、これ以上哀しませることなんて私には出来ない。

 食後、二階にある自分の部屋に行ってベッドの上に体を投げ出す。棚には、過去にもらったトロフィーや楯が飾ってある。道場のみんなで行った全国大会の写真も。みんなの笑顔がはじけている。この、武道館の看板の前で撮った写真は宝物だ。

「そうだ。真帆りんにメールしなくちゃ」

 スマホを取り出してアプリを開く。メッセージを作って送信すると、すぐに返事が来た。

『朱里! 久しぶりだね。 ありがと! 自分でも信じられないもん。調子良かったんだ! 県大会も頑張るね! あ、そうだ。朱里もたまには道場来なよ。私、今でも行ってるんだよ、火曜の夜にいるからさ。待ってるよ~』
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