俺様天使の助手になりまして
振り返ると、帽子を被った男が、こっちに向かって全力な感じで走ってきていた。茶色の鞄みたいなものを抱えて、人にぶつかってもお構いなしで突進してくる。
「え、え、え、何あれ。普通じゃないよ?」
「誰か! そいつ捕まえて!」
「ひったくりだぞ!」
ひったくり!??
ど、どうしよう。近くにいるのは、か弱い女子や小さい子を連れたママだけ。みんな不安そうな顔をして固まっている。
アクマ天使は上階に行ったのか、姿がない。
犯人を追ってくる男の人もいるけれど、全然追いつけていない。
その遥か後ろの方で、お婆ちゃんがヨタヨタと走っている。きっと、鞄はあのお婆ちゃんのだ。
何てヤツ!!
「ちょっと! 待ちなさいよ!!」
両手を広げて、走ってくる犯人の軌道上に立った。
このままじゃ犯人の体重や勢いに負けて転ぶだろう。けど、正面から体当たりをすれば、スピードは緩められる筈だ。そこを、追いかけて来る男性が捕まえてくれれば。
「うるせえ! どけ! 怪我すんぞ!」
犯人の手には、きらっと光るものが見える。小さなナイフだ。やみくもに振り回しながら走ってくる。
あんなの、竹刀さえあれば、やっつけられるのに。