俺様天使の助手になりまして

「そんなの、怖くない!!」

 唇をぎゅっと結んで睨みつけていると、私のすぐ後ろで、スタン、と軽い音がした。

「お前は下がってろ」

 素早くそう言って、私の脇を風のように走りぬけて行く、あの無駄に大きな背中は――。

 犯人の振り回すナイフが当たりそうになった瞬間、その人は素早く屈んで床に手をつき、シュンと風切り音を立てて回し蹴りをした。

 舞踏家のように舞った長い脚は、犯人の脚を見事に捉えて体を宙に飛ばした。

 ズダッ! ベシャァッ、カランと、様々な音を立てながら私の足元で床に転んだ犯人は、顔を苦痛に歪めて「グエェェッ」と汚い声を漏らした。

 その背中の上にすかさず乗って腕を拘束していたのは、アクマ天使だ!

「お前は。ほんとーに、目が離せねえヤツだな。普通、丸腰でナイフに立ち向かうか?」

 メガネ男子のままやっつけちゃった……。

 天使じゃないと何もできないと思っていたのに……強いんだ。

「君、大丈夫ですか! 怪我していませんか!」

「平気です。ですが、押さえつけるの、代わって貰えませんか」

「よし、任せろ」
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