俺様天使の助手になりまして
アクマ天使は、ばたばたばたと走って寄って来た男性陣のうち、一番ガタイのいい人と交替してもらっている。
私は、犯人がばらまいた鞄とその中身をかき集めて、ヨロヨロと走って来たお婆ちゃんに渡した。
「はい、お婆ちゃん。全部拾ったつもりです」
「ありがとうね。拾い集めてくれて、本当にありがとう。鞄をベンチの上に置いて休んでいたら、この人がバッと取り上げて、ぴゅーっと走ってっちゃって。もう吃驚して、叫び声も出なかったの。ほんとに、ありがとう」
お婆ちゃんは息を切らしたまま一生懸命に喋って、何度も頭を下げてくれる。
「いえ、取り戻せて良かったです。でも、これからは、鞄を離さないようにしてくださいね」
「そうだねぇ、そうするよ」
「あの、どうぞここに座ってください」
エスカレーターの脇にあるベンチに、疲れた様子のお婆ちゃんを案内して座ってもらう。そして、汗を拭いているお婆ちゃんに、自販機のお水を買って渡した。
「どうぞ、飲んでください」
「ありがとう。あなたは、本当に優しい子だねぇ」
よりによって、こんなお年寄りから鞄を奪うなんて。今回は精玉の影響じゃない。きっと犯人は普段からこんなことしてるに違いない。