俺様天使の助手になりまして

 そう言って出て行っちゃったのだ。

 いつ帰ってくるのか言わなかった。会議は、時間がかかるイメージがある。

 待っている間、何をしていよう。

 門を潜る時スマホは壊れるかもしれねえぞって言われたので止めたんだ。けど、夏休みの課題なら境界越えても大丈夫そうだから、持ってくればよかった。暇だ。

 窓の外は青い空がある。普通に土があって木が生えているし、花も咲いている。

 天界って、雲の上に家が建っていると思っていた。でもこれだと、地上の景色と全然変わらない。

 部屋から出てもいいのかな。外に出ちゃっても平気かな。

「少しくらいなら。でも、うーん。でもここにいろって言われたし」

 悩んでいると、カチャと、微かな音がした。

 見れば、ドアが少し開いている。

 誰かが開けたのかな。それとも、風のいたずら? 

 いやそんなワケがない、だって、窓は開いていないのだから。

 ドアと壁の隙間で、何かがちょろちょろと動いている。こしょこしょと小さな話声もしてくる。

 誰かが部屋を覗いてるんだ!

「あ、アレなんだろう? 不思議だな~」

 適当に呟きながら、対象の死角に入る位置まで、なにげなく移動していく。そして、壁際に沿ってドアまでこっそりと近付いた。

 まだ、内緒の話し声は聞こえてくる。

 心を決め、ドアノブをぐっと握り締めて一気に開けた。
< 166 / 264 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop