俺様天使の助手になりまして
「おい、俺達も失礼すんぞ」
「うん」
アクマ天使と一緒に退室の挨拶をして廊下に出ると、ふわっと空気が軽くなった。あの部屋の中は、相当な重圧があったみたいだ。
「お前、腕見せてみろ」
ぐいっと腕を引かれて、天使服の袖がまくられた。
「ったく、あのクソバカ力が。ここ、赤くなってんじゃねえか。痛くねえか」
「え、っと。大丈夫、痛くないよ? 赤いだけだよ」
アクマ天使だって最初の頃は手首を握って赤くしたくせに。今は、赤いところを摩る手が、すごく優しい。
そんな風にされたら、困るよ。ドアの向こうに、彼女がすぐ傍にいるのに。
「あのさ、平気だから」
腕を引っ込めようとすると、「動くな」って、ぐいっと引かれる。
「お、リクトール。それ。女神は治さなかったんだね。へえ、なかなかやるじゃないか。結構お茶目だなあ」
振り向くと、すぐ隣にオタク天使がいた。にまーっと笑っている。さっきまで、廊下のどこにもいなかったのに、どこに隠れてたんだろう。神出鬼没とは、こういう現象を言うのかな。
というか。今、さらっと何て言いました?
「女神さま!? どのお方が?? まさか!!」
「おや、気付かなかったのかい?」