俺様天使の助手になりまして
この、竹刀を振る音が大好き。小学生のころからずっとやっていた剣道。素振りは毎日の習慣になっていて、やらないと気が済まないものになっていた。
なんで、わざわざこんな場所に来て素振りをするのか。その理由は、簡単だ。高校は進学校で剣道部がないし、剣道をやるとママが良い顔しないから。
「ん~久々、すっきりした!」
ミニタオルで額から流れる汗を拭きとり、鞄の中からスマホを取り出した。
「五時半か」
塾まで、まだちょっと時間がある。
祠前の階段に座って、ペットボトルのお茶を飲んだ。吹き渡る風が、熱くなった体を冷やしていく。
静かな境内には、鳥の囀りと蝉の声だけが響いている。
なんて気持が良いんだろう。外界から隔たれているような静かな空間で、身も心も癒される。神社って本当に不思議な場所だ。
ぼーっと座っていると、急に、周りの音が聞こえなくなった。
風も止んでしまって、木々の揺れる音もしない。
「嘘……あっちは、風は吹いてるのに?」
周りを見回せば、石段の方の木は揺れているけれど、境内の中は微動だにしない。どういうことだろう。
ガサッ……バキバキ……バキッ。バサ、バサバサバサ……。