俺様天使の助手になりまして

「ぴぃ、そこにいたんですか。何をやってるんですか。いきなり飛んでいくとは、あ! あなたは!」

 マジシャンが私を見てびっくりしている。やっぱり、私のことを知っているんだ!

「待って!」

 今にも逃げ出しそうで、マジシャンの服の端をしっかり掴んだ。

「……助手?」

「アカリさん、覚えてるんですか!?」

 マジシャンは心底驚いている。覚えているんですかって、どういうこと?

「……納得できません」

「そんなことを言われましても、自分が決めた事ではありませんので」

 すごくオロオロしている。これなら、押せば喋ってくれるかもしれない。

「……ので? その先は?」

 一体誰が何を決めたの? はっきり言ってよ。このモヤモヤを払拭してよ。あのメガネ男子は誰なの? ここに来たら顔がはっきりしだしたよ。助けてよ。

「もう、苦しいよ」

 教えてよ。胸の痛みの正体を知りたいよ。

 下を向いた拍子に、地面に雫が落ちていった。今は、泣いていられないのに。

「おや? あなたは、朱里さんじゃないですか。おやまあ、これは大変ですね」

「あ、春川さん。これっ、自分が泣かせた訳ではありませんからっ」
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