俺様天使の助手になりまして
胸がドキドキする。体が震える。嬉しさが込み上げてくる。
ね、ほんとに? 幻じゃないよね?
恐る恐る窓の外に手を伸ばす。すぐそこにいる。もう少しで、届きそうなところに。
逃げないで。消えないで。お願い、そのままそこにいて。
「会いに来てくれたの?」
「残念でした。想うお方と違います」
「――誰!?」
バッと窓から離れ、ベッドの上の枕をひっ掴んで楯代わりに持つ。
全体に白いから天使に見えるけど、最初は虫だった。
天使って、忍者みたいに変身できるんだろうか。これは、何者?
はっ、まさか次元の穴から出てきた――
「魔族!? ここに何しにきたの!」
「おおなんと。百面相をして見せ、次に何を言うかと興味深く様子を見ていれば。全く心外ですね。私は天使です。一番隊所属、リクトール隊長の部下です」
「部下?」
楯代わりの枕に隠れながらじろじろと観察する。
本当だろうか。頭にツノらしき物はない。しっぽは、ついてないようだ。
全体がほわぁっと光って見える。でもそれは満月が当たっているせいかもしれない。
「証拠は?」
「証拠、ですか。難しいですね。あなたの記憶は薄れているし。何をもって証明すればいいのでしょう」