俺様天使の助手になりまして
電話中のサナダの服をツンツン引っ張る。
お化け屋敷から何かがどんどん出てくるのだ。屋根や壁は固いはずなのに、柔らかい水の膜でも通るみたいにするする出てくる。
髪の毛があって手も足もあって人に見えるけれど、どこか違う。
姿勢が悪いずんぐり体形で、ボロい服を着ている。脚は短く、腕は地に擦れるほどに長い。
それに、太陽が当たっているのに、体の周りが日影みたいに暗い。あれが、魔族。
お化け屋敷に並んでいる人や傍を通る人は平然としている。やっぱり見えないのだ。
サナダと一緒に「魔族がいるから逃げて!」って騒いでも、信じてもらえないだろう。
お化け屋敷の出口から、ふらふらと人が出てきた。それが、みんな歩き方がおかしい。まるで、ゾンビみたいに虚ろで、右肩の辺がモヤっと黒い。
あれはまさか……。
【これはマズイです。あの建物の中で、悪玉憑きにされましたね】
サナダとは違う声が、頭上から降ってきた。
頭の上から光る虫がスーとおりてきて、私のすぐ前でふわふわと浮かんでいる。それが、ぶわっと一気に大きくなった。
「忍者天使!」
「アカリさん危ない!!」
「ひゃっ!」
サナダに腕を掴まれて、強引に引っ張られた。